「こういう症状なのですが、すぐ動物病院に行くべきですか?」
「何日くらい様子を見ていていいですか?」
「先週下痢をした。一度普通の便に戻ったが、また下痢をした。連れて行くべき?」
「昨日からご飯を食べない。でもおやつなら食べる。どこか体調が悪い?」
「なんとなく元気が無いけどご飯は食べる。様子を見てていい?」
「最近吐くことが増えたが、ご飯も食べるし元気そう。大丈夫ですかね?」
などなど、動物病院へ連れて行くべきか迷っている方から、様々な問い合わせを受けます。
基本的には迷ったら動物病院へ連れてきてもらった方が良いです。
個人の判断で何日も様子をみるのはおすすめしません。
電話で飼い主さんから聞く様子と、実際に診察してみたときの動物の様子が違うことも結構あります。
そういえば、この前こんなことがありました。
それは「ハサミで猫の毛玉を切っていたら皮膚も切ってしまったが、ちょっと傷つけただけで…」という話でした。
それなら消毒くらいで済むかな? という気持ちで診察を始めたのですが、実際に診てみたらぱっくり皮膚が裂けていて麻酔して縫合が必要なレベルでした。
「ちょっと」ではない!(笑)
飼い主さんが考えているよりも事態は深刻な場合もよくあります。
動物は体調が悪くてもそれを隠そうとしたり、我慢する傾向があります。
家で様子を見過ぎて動物病院に連れて来た時にはすでに末期の状態になっており、治療しても助からなかったという経験も多々あります。
極端な例ですが、「2週間前から嘔吐しており、昨日からぐったりしてきた」という主訴で来院した犬を検査してみると、膵炎を起こしており、おそらく吐いたことで脱水してしまい、腎臓に負担がかかって腎不全末期の状態にまで陥ってしまって助からなかったなんて経験もあります。
多臓器不全になると治療も難しくなってきます。
もうちょっと早く動物病院へ連れてきていたら結果は違ったかもしれません。
若い子なら体調が悪くなっても回復が早いかもしれませんが、高齢になると回復が遅いですし、悪くなるスピードも早いです。
「1か月前から体調が悪くて…」とか「2,3か月前から下痢が続いていて…」とか、そういう主訴で動物病院へやって来る方は珍しくないです。
特に下痢は経過が長い子がよくいます。
それでも元気な子は元気ですが、下痢によって脱水を起こし、脱水によって内臓に影響が出ている子も見かけます。
動物病院へ連れて来れなかった事情も色々あるのかもしれませんが、経過が長くて体調が随分悪くなっている子を見ると、もうちょっと早く連れてきてくれたらなぁ…と思うことがあります。
獣医師によっては「連れてくるのが遅い!」とはっきり飼い主さんに怒っている人も。
怒られるのは誰でも嫌だと思います。
経過が長いことをあまり言いたく無さそうな雰囲気で報告してくれる飼い主さんは珍しくないです。
中には怒られるのが嫌で来院がさらに延び延びになってしまったなんてパターンもあるかもしれません。
診断や治療内容にも影響が出る可能性がゼロではないので、あまり嘘はついてほしくありませんが、連れてくるのが遅くなってしまったことを怒られるかもしれないと思ったら、多少誤魔化したり、「どうしても連れて来れなくて…」などと嘘の言い訳をしてもいいと思います。
とにかく早く連れてきてください。
動物は言葉でしんどいと言ってくれません。
見た目が普通に見えても病気が進行していることがあります。
ふだん様子を見ている飼い主さんが頼りです。
ちょっと話がそれてしまいましたが、何かおかしいことがあれば早めの来院をおすすめします。
症状が出てからたった2,3日でも急激に悪くなっていくことがあります。
確かに中には家で様子を見ていても平気なこともあります。
迷ったらまずは動物病院に電話してみるのはとてもいいことです。
ですが、動物を診察していない段階で絶対に大丈夫とはなかなか言えないことが多いです。
先ほどの猫の皮膚を切ってしまった件の「ちょっと」という表現のように、電話で聞いた飼い主さんの説明と実際とでは違うこともあります。
皮膚を切ってしまったことが気まずくて「ちょっと」と言ったのかもしれませんが、獣医師側からしてみるとこういった飼い主による過小評価は注意しなければいけないことのひとつです。
電話で話を聞くときはもう少し具体的に聞かなければいけないと感じます。
この皮膚の件であれば「何センチくらい切ったのか」とか、「傷の深さはどうか」など、話を聞く側も気をつけようと思います。
動物病院へ連れて行くのは面倒くさいかもしれません。
お金がかかるからあまり行きたくないという理由もあるかもしれません。
動物病院に連れて行った後に拗ねて押し入れから出てこなくなる、しばらくご飯を食べなくなるというパターンもあります。
混んでいて待たされるし、怖がりな性格だし、具合が悪い子を連れて行くのは可哀そうと考える方も結構多いです。
私の母もそういうタイプです。
先日実家の猫について電話がかかってきました。
「最近なんか元気無くて、ナマコのようにぐたーっと寝てるんだけど、大丈夫かな? 夏バテかな?」と言うので、動物病院へ連れて行くことをすすめてみたら「怖がりだから動物病院に連れて行くのは可哀そう」と言われました。
ですが、放置することで体調が悪化してしまうと、1回の通院では治療が終了せず、余計に治療費がかかったり、入院が必要になったり、何度も通院する必要が生じてしまうこともあります。
動物病院によっては往診してくれるところもあるので、連れて行くのが負担になるのであれば、家に呼ぶという手もあります。
ただし動物病院の診察室とは違って家でできることは限られるかもしれません。
でも一度状態を診てもらい、病院へ連れて行く必要があるか判断してもらうのもいいかもしれません。
迷ったらまずは動物病院に電話して相談してみるのがおすすめです。
それによって重い腰が持ち上がるかもしれないです。
とにかく、放置して手遅れになるようなことだけは避けてほしいと思います。
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