お悩み相談「高齢犬の夜鳴きに困っています。近所迷惑が心配だし、飼い主も眠れません」

お悩み相談

高齢犬の飼い主さんからよくある相談のお話です。

タイトルにある通り、今回のテーマは「夜鳴き」です。

とても困っている方多い印象があります。

「夜鳴きがうるさくて飼い主が寝不足で参ってます…」

「ノイローゼになりそうです」

「近隣に迷惑になっていないか心配で」

「睡眠薬みたいなものありませんか?」

このような相談があります。

どのように対策していけばいいか考えていきましょう。

夜鳴きの原因

夜鳴きの原因は大きく分けて以下のようなことが考えられるのかなと思います。

①認知機能不全症候群(一般に認知症と言うことが多い)で鳴いている

②何か要求して鳴いている

③体に不快感がある

認知症については後述します。

体が不自由なため自力で水が飲めなかったり、体の向きを変えられなかったり、排泄できなかったりで、「水が飲みたい」「体の向きを変えてほしい」「うんちがしたい・おしっこがしたい」「お腹が空いた」などを要求して鳴いていることもあります。

また、どこか体が痛いなど体の不快感から鳴いている可能性もあります。

以前こんな飼い主さんが来院されました。

「鳴くから病院に連れて行ったが、その病院では認知症だろうと言われた。でも納得できないから、セカンドオピニオンに来た。どこか体に悪い所があるのではないか?」

検査をしたら確かに内臓に悪い所が見つかりました。

同時に認知症があったかもしれませんが、それだけではなかったというパターンです。

夜鳴きの理由は1つではない可能性も考えなければいけません。

認知機能不全症候群(CDS)

加齢に伴って認知機能の低下が進行していく病気で、人のアルツハイマー病に似た脳の退行性変化がみられます。

簡単に「認知症」「痴呆症」などと言われたりしています。

以下のような症状があります。

見当識障害Disorientation)
知っている場所で迷子になったり、知っている人を理解できなかったり、部屋の出入口を間違えてしまったりといったことが見られます。

社会的交流の変化(Social Interactions)
飼い主に甘えなくなる、遊ぶことに興味が無くなる、撫でても喜ばなくなる、散歩に行っても他の動物に挨拶しなくなるなど。

睡眠/覚醒サイクルの変化Sleep-wake cycle)
日中の睡眠時間が増え、夜間に徘徊するようになります。

粗相する 学習と記憶力Housesoiling,learning and memory)
トイレのしつけを忘れてしまい、室内で排便・排尿したり、トイレ以外の場所で漏らしてしまったりします。

活動性の変化Activity)
目的無く円を描くように歩き続けることが増える、吠え続ける、無関心になる、落ち着きがなくなる、寝てばかりいるなど様々な行動の変化が見られます。

不安Anxiety)
飼い主から離れると不安になる、音に過敏になる、何かと怖がることが増えます。


症状の頭文字を取って、「DISHAAの徴候」と言われることもあります。

以下はPURINAの認知機能不全症候群評価ツールを引用したものです。

よろしければお家のわんちゃんに対して自己評価してみてください。

◆8歳以降に表れてきた、あるいは進行してきた徴候について、以下の18の項目にスコアを付けてください。

なし=0
軽度(稀にある)=1
中等度(時々ある)=2
重度(最低でも1日1回、あるいは常にある)=3

・隙間に挟まる、物をよけることができない、ドアの蝶番側を通ろうとする
・壁、床、空中など何もないところをぼんやり見つめる
・馴染みのある人や動物を認識できない
・家の中や庭で迷子になる
・視覚刺激(光景)や聴覚刺激(音)に対する反応が鈍い
・以前よりも来訪者や家族、他の動物に対してイライラしたり、怖がったり、攻撃するようになった
・近づかれたり、挨拶したり、可愛がられたり、撫でられることに対する興味が減った
・夜間にウロウロと歩く/落ち着きがない/あまり眠らない/目を覚ましている
・夜間に鳴いたり吠えたりする
・新しいことを覚えにくい、あるいは既に習得しているコマンドや名前、作業への反応が鈍い
・家の中のトイレ以外の場所に排尿や排便をする、あるいは外出したいという意思表示が減った
・犬の気を引くことが難しくなった、注意散漫である、集中力が減った
・探索をしたり、おもちゃや家族、その他の動物と遊ぶ頻度が減った
・無目的な歩行や徘徊などの活動が増えた
・旋回運動、咀嚼、舐め、ぼんやりと宙を見るといった反復行動を示す
・飼い主から離れた際の不安が増えた
・視覚刺激(光景)や聴覚刺激(音)に対して過敏になったり、怖がるようになった
・新しい場所や環境、外出を怖がることが増えた

◆トータルスコア
4~15:軽度CDS
16~33:中等度CDS
33以上:重度CDS

いかがですか?
認知機能不全症候群(CDS)の可能性はありそうですか?
認知機能不全症候群についてはまた改めて記事を書きたいなとも思うので、今回はこのあたりまでにしておきます。

夜鳴きの傾向を分析する

話を夜鳴きに戻しましょう。

まずは夜鳴きの状況をしっかり記録していただきたいと思います。

その日の日中の行動から記録に残してください。

日中はどれくらい寝ていたか、お水を飲んだ時間なども記録しておくと良いと思います。

鳴いたときに何をしたら鳴き止んだか、一定のトーンで鳴いているか、放置していたらその鳴き声はどんどん大きくなるのかなど、些細なことでもいいので気づいたことは何でも記録してみてください。

その日の天気も影響があるかもしれないので、特に気圧の変化にも注目してみてください。

犬も気圧の変化で調子が悪くなることがあります。

色々細かく記録を付けていくことで、要求鳴きなのか、認知症など他の要因で鳴いているのか、傾向が見えてくるかもしれません。

そこから対策方法も見えてくるかもしれません。

ちなみに要求鳴きの場合は要求が満たされればピタッと鳴き止むことが多いです。

夜鳴き対策

具体的にどんな対策ができるか挙げていきましょう。

日中なるべく活動させる

一緒に遊ぶ時間を増やしたり、簡単なトレーニングをしてみたり、外に連れ出して様々な刺激を与えるなどで疲労感も生まれ、日中起きている時間が長いと夜寝やすくなります。

日中留守にしてしまう場合は、もし夢中になれるおもちゃがあればそれを置いておくのも良いと思います。
例えば転がしたらおやつが出てくるおもちゃなど。
ペットボトルにドッグフード一粒が通るくらいの小さな穴を開けておき、転がしてるうちに中のフードが出てくるという仕組みにしておけばしばらく遊べるかもしれません。
製品としても中におやつやフードを詰められる仕組みのおもちゃは売られているので利用してみても良いと思います。

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夜間に眠りを妨げる要因を極力減らす

例えば夜間にお腹が空いて起きてしまっていることが考えられるなら、夜遅くに夜食を与えてから寝かせるようにする。

夜間に排泄を訴えることが多いようなら、寝かせる前になるべく排泄を済ませてから寝かせる。

寝たきりの子の場合は長時間同じ体勢で寝ていると床ずれが起きることもあり、体が痛くなることがあります。床は硬くありませんか? ベッドをふかふかにするなどの対策も重要です。

動物用の床ずれ防止マットを利用しても良いですが、それだけ使用してもちょっとまだ硬いことがあるので、ふつうの布団や毛布をさらに組み合わせて使用すると良いのではないかと思います。

飼い主さんから離れることで不安になって鳴いている場合は傍で寝てあげるといいかもしれません。

夜中に風の音や何か物音がして気になる場合はなるべく静かな場所に移動させましょう。

動物病院で検査を受ける

高齢になってくると何かしら病気を抱えている子は多いです。

しばらく動物病院で健康診断など検査をしていない場合は、一度検査しておくと良いと思います。

本当はどこか辛くて鳴いているのかもしれません。

サプリメントの活用

即効性はあまりありませんが、サプリメントが有効なこともあります。

ものによっては1か月~2ヵ月くらい続けないと効果が出てこないかもしれません。

アンチノールプラス、ジルケーン、ACTIVATE、CBDカゼインタブなどがあります。

医薬品の使用

以上のような対策を色々と試したが改善が見られないという場合は動物病院で薬を処方してもらうという手もあります。

麻酔薬のような強い薬は基本的に処方できませんが、精神安定薬(抗不安薬)などを使用することで眠ってくれることは多いです。

ただし、医薬品は副作用が伴うことがありますので獣医師の指示に従って使用してくださいね。

使用しているとだんだん効果が弱くなってくることもあります。

いくつかの薬を組み合わせたり、サプリメントと併用することでコントロールしている方も多くいらっしゃいます。

徘徊して障害物に立ち往生して鳴く場合

角に頭を突っ込んで後ろに下がることができずに鳴いてしまうというパターンはとても多いです。

動けなくなって鳴く場合は障害物に当たらないような環境を作りましょう。

簡単なのは円形のサークルに入れてしまうことです。

引っかかる場所が無いので永遠にくるくる歩き回り、疲れてそのうち寝てくれたりします。

起き上がれなくて鳴く場合

足腰が弱ってくると自力で立てなくなってきます。

本人は立って歩きたいのに立てないので「起こして!」と鳴くこともあります。

起こしてあげてもすぐに転んでしまい、また鳴くの繰り返しで飼い主さんも参ってしまうということも多いと思います。

少し用意するのが大変かもしれませんが、犬用の車いすを用意してあげることで解決することがあります。

ハンドメイドで用意している方もいます。

全身を支えられるタイプなら疲れたら車いすに乗ったまま寝てしまう子もいます。

車いすに乗ったまま動き回ってそのまま障害物に引っかかって動けなくなって鳴くという場合は、車いすの片方の後輪を円形のものに引っ掛けておけば、その範囲で円を描いて永遠に歩けるので障害物に引っかかることもありません(例えば三角コーンの重り)。


いかがでしたでしょうか。

何か一つでも役に立つ情報があったことを願います。

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