犬を飼うのが初めてなのですが、この後しなきゃいけないことは何ですか?
これは初めてわんちゃんを飼うという飼い主さんからよく受ける質問です。
子犬が生後2か月半くらいでペットショップから家にやって来た場合を例としてお話してみようと思います。
ブリーダーや保護施設から引き取る場合も基本は同じですので、ぜひ参考にしてみてください。
子犬が生まれて1年目にすることにはざっと以下のようなことが挙げられます。
①混合ワクチン接種
1回目
2回目
3回目※必要な場合と不要な場合があります
②狂犬病ワクチン接種、市区町村へ犬の登録
③ノミ・マダニ予防薬の投与
④フィラリア症予防薬の投与
⑤マイクロチップの装着、飼い主情報の登録
ひとつひとつ見ていきましょう。
1回目の混合ワクチン接種
1回目の混合ワクチン接種は生後2か月頃を目安に行います。
動物愛護法により生後56日を経過しない子犬の販売・引き渡しは禁止されています。
そのため、家に来た時点で1回目の接種は済んでいることが多いです。
済んでいない場合は、動物病院で1回目の接種を行ってください。
ワクチン接種に予約が必要な病院と不要な病院がありますので、訪問前に電話で確認すると良いですよ。
ただ、家に来たばかりの子犬は環境の変化で体調を崩してしまうことも珍しくありません。
家に迎えたら1週間程度は環境に慣らすために安静に過ごすことをおすすめします。
ワクチン接種を指示された日があるかしれませんが、必ずしもその日にワクチン接種へ行かなくても大丈夫です。
大幅に接種日をずらすのはおすすめしませんが、食欲や元気、便などに異常が無いことを確認してワクチン接種へ行きましょう。
”1週間程度様子を見て”と言いましたが、子犬も気を張っているのか、家に来た直後はあまり体調を崩さず、新しい環境に慣れて気が緩んできた頃に体調を崩すというパターンも見られるので注意です。
2回目の混合ワクチン接種
たいていの飼い主さんはここからです。
1回目の接種から約1か月空けて2回目のワクチンを接種します。
1回だけの接種では抗体価が十分に上がらないため、追加接種するわけです。
人でも新型コロナウイルスのワクチンを最初は1か月間隔を空けて2回セットで接種した方が多いのではないでしょうか。
1回目が済んでいる場合、おそらくペットショップから1回目のワクチン接種証明書を渡されるはずですので、その証明書に2回目のワクチン接種予定日が記載されています。
その予定日を目安に動物病院へ行ってください。
3回目の混合ワクチン接種
3回目の接種は必要な場合と不要な場合があります。
生後2か月頃に1回目、その1か月後に2回目を接種している場合は、それだけで十分抗体価が上がるので、3回目はうたなくていいと思います。
3回目の接種が必要なのは、生後2か月よりも早い段階で1回目を接種している子です。
これには1回目のワクチンを生後2か月を目安に接種する理由が関係しています。
生まれたばかりの子犬は母子免疫と言って、母犬から授かった免疫を持っています。
その免疫力が落ちてくる頃が生後2か月頃になります。
免疫力が弱くなってきた頃にワクチンを接種することにより病気を予防するというわけです。
まだ母子免疫が残っている状態で1回目のワクチンを接種しても、元々持っている免疫がワクチンの効果を弱めてしまいます。
1回目のワクチンの効果が弱い状態で、2回目のワクチンを接種しても、抗体価がまだ不十分なので、3回目の追加接種をするわけです。
もうひとつパターンが考えられます。
それは、1回目と2回目の混合ワクチンの種類を変えた場合です。
ワクチンの種類についてはまたの機会に書きたいと思っているので、細かい所は今回は割愛します。
例えば1回目に6種混合ワクチン、2回目に8種混合ワクチンを接種したとします。
6種ワクチンと8種ワクチンの差は、レプトスピラという病気が含まれているかいないかの違いになります。
ペットショップで済んでいる1回目のワクチンはわりと6種ワクチンが多い印象があります。
ペットショップによって違うと思います。
2回目も6種ワクチンを選ぶのであれば、それで1年目は完結でいいでしょう。
2回目に8種ワクチンにするなど中身を増やす場合は、その増やした分についてもう一度接種することをおすすめします。
3回目も8種ワクチンにしてもいいですし、レプトスピラワクチンを単体で追加接種することもできます。
1回目に3種ワクチンという少し弱めのワクチンを早い段階でうっている場合もよく目にします。
その場合は3回接種で3種→8種→8種というように2回目と3回目の種類は同じがいいと思います。
混合ワクチンは初年度だけ複数回接種し、翌年からは1年に1回の接種で十分です。
犬の混合ワクチンについては別で記事を書いていますので、よければ参考にどうぞ↓
「犬の混合ワクチン接種 どれをうつのがおすすめ? 抗体価検査って?」
狂犬病ワクチン接種、市区町村へ犬の登録
これは今回説明するイベントの中で唯一絶対やらなければならない”義務”です。
違反すると罰金の対象になります。
生後91日を過ぎたら早めに狂犬病ワクチン接種と犬の登録を行うようにしてください。
狂犬病予防接種ついては別記事を書いていますので、詳しくはこちらをご覧下さい↓
「狂犬病ってどんな病気? 国内で発生してなくてもワクチンはうたなきゃダメなの?」
しかし生後91日というと、まだ混合ワクチンの接種も完了していない頃になります。
2回目と3回目の混合ワクチンの間で狂犬病ワクチンを接種するパターンもありますし、混合ワクチンを全て終わらせてから狂犬病ワクチンの接種を行うパターンもあります。
犬に負担がかかるので基本的には同じ日に混合ワクチンと狂犬病ワクチンの接種は行いません。
接種する順番や予定日をペットショップで指示される場合もあります。
よくわからなかったり、指示された予定だと都合が合わないなどの場合は、かかりつけの獣医師と予定を相談するといいと思います。
翌年からも狂犬病ワクチンは1年に1回接種してください。
これは絶対です!
2年目からはお住まいの市区町村から家に案内の手紙が届くようになると思いますので、その案内に従えば大丈夫です。
ノミ・マダニ予防薬の投与
ワクチンが済むと、待ちに待ったお散歩デビューとなります。
外を歩くことでノミが付くかもしれません。
ノミは気温13℃以上で活発化すると言われています。
お散歩で草むらに入ってマダニを付けて戻ってくるということもあります。
ノミ・マダニ予防薬の投与は義務ではありませんが、寄生してしまうとそこから別の病気を引き起こしたり、家の中でノミが繁殖してしまうと駆除が大変です。
毎月1回、ノミ・マダニ駆除薬の投与をおすすめします。
冬でも家の中が暖かいとノミを見ることがあるので、お住まいの地域にもよりますが、通年予防がいいかもしれません。
体重や年齢の制限で投与できない薬もありますし、動物病院により取り扱っている薬の種類も異なりますので、かかりつけの動物病院で相談してみてください。
ペットショップでもノミ駆除薬は販売されていますが、物によっては効果が弱いと感じることがあるので、動物病院で処方してもらうことをおすすめします。
フィラリア予防薬の投与
義務ではありませんが、フィラリアに感染すると大変なので投与をおすすめします。
フィラリア症についても別の記事を書いているので、詳しくはこちらをご参照ください↓
「フィラリア症ってどんな病気? 予防が大事なのはなぜ? 何月まで予防が必要?」
フィラリア予防薬によっては年齢制限と体重制限があり、早すぎると投与できない場合があります。
早い時期から使用できる予防薬もあるので、飼い始めたのが春~秋の場合はその年から予防を行うことをおすすめします。
フィラリアは蚊の発生時期が関係しているため、冬から飼い始めた場合は、春からの予防開始でいいかもしれません。
マイクロチップの装着、飼い主情報の登録
令和4年6月1日より、ブリーダーやペットショップ等で販売されている犬猫はマイクロチップの装着が義務となりました。
そのため、犬が家に来る時にはすでにマイクロチップが装着されているかもしれません。
譲り受けた等でまだマイクロチップが装着されていない場合は、装着することが推奨されています。
この場合は義務ではなく、努力義務です。
マイクロチップはインプランターという注射器のような形の道具で皮下に埋め込みます。
無麻酔でもできます。
ですが、普通の注射よりは針が太めですので、もし去勢・避妊手術などで麻酔をかける予定があるようでしたら、麻酔下でマイクロチップの埋め込みも一緒にやってもらうといいかもしれません。
マイクロチップを装着した後は、マイクロチップ番号と飼い主情報を結びつける登録手続きを忘れないようにしてください。超大事です。
飼い主情報を登録しなければマイクロチップを入れている意味がありません。
登録情報の変更がある場合も、早めに変更手続きを行いましょう。
もし犬が迷子になってしまった時、誰かがマイクロチップを読んでくれたら飼い主が判明し、飼い主の元へ戻ることができます。
ちなみにGPS機能は無いので、脱走しても居場所を特定することはできません。
以上が最低限してほしいことでした。
もうひとつ、よく質問を受けることがあります。
避妊・去勢手術をいつ実施するかということです。
飼い始めて1年目に実施することは多いです。
動物病院によって実施時期は多少違うかもしれませんが、私の勤務先では早くて生後6か月頃とお話しています。
特に女の子は1回目の発情期が来る前に避妊手術をすることで、乳腺腫瘍の発生率をぐっと下げることができます。
犬種にもよりますが、生後7か月頃になると発情が来てしまう場合があるので、乳腺腫瘍の予防を考える場合は時期を逃さないように注意です。
男の子は逆に早すぎてもあまりメリットが無いように思います。
早い段階で精巣を摘出することで、尿道が小さいまま大人になり、例えば尿石症になってしまったときに、尿道に石がより詰まりやすくなる可能性があります(※未去勢の子でも尿石はつまります)。
避妊・去勢手術について、詳しくは今後改めてお話したいと思っています。
保護施設から、すでに大人になった犬を引き取るというパターンも多く見受けられます。
基本的な流れは同じです。
大人であれば混合ワクチンは1回でも足りるかもしれません。
以上、参考になれば幸いです。
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