騒がしい猫の発情期。避妊去勢手術のメリット・デメリットは?

私の住んでいる地域は野良猫が結構多くいます。

最近もそうなのですが、発情期になると大きな鳴き声が頻繁に聞こえてきますし、メス猫が怒っているのか、ケンカしているような様子もしょっちゅうです。

「ニャオ…ニャ~オ!ニャ~~~オ!ニャ~~~~~オ!!!
ギャッ#%&$〇△×□!!!(ドタバタドタバタ)」みたいな激しい音が聞こえます。

夜中に声で起こされることも。

年に数回このような騒ぎのピークがやってきます。

お家で飼っている未避妊の猫ちゃんも発情期が来るといつもより鳴いたり、人にやたらとすり寄って来たりします。

大きな声で鳴くので近所迷惑になっていると相談を受けることもしばしばあります。

今日は猫の繁殖にまつわるお話と避妊去勢手術のメリット・デメリットについてお話します。

猫の繁殖期

猫は季節繁殖動物であり、日照時間が繁殖期に関係しています。

日本では1月~8月頃が繁殖季節で、この時期にメス猫は繰り返し発情します。

特にピークは2月~4月と6月~8月かなと思います。

しかし家の中にいる猫は夜間も照明があるので1年中繁殖します。

1日12時間以上の照明の下で生活させると年中繰り返し発情し、照明を8時間以下にすると無発情になるそうです。

一般にメス猫が性成熟を迎えるのは生後7~12か月、体重が2.5kg以上になった時です。

早くて生後6か月くらいです。

ちなみに長毛種よりも短毛種の方が早く性成熟します。

一般的に発情期(オスを許容する時期)は5~14日間で、個体により前後します。

メス猫が発情すると、以下の様な徴候が現れます

・ふだんとは違う声で鳴く

・体を人や物にスリスリこすりつける

・腰を低くして足踏みする(ロードシスと呼ばれる行動)

・腰のあたりを触るとお尻を持ち上げる


猫は交尾排卵動物と言って、交尾の刺激により排卵が起こります。

交尾後1日かそこらで排卵し、交尾すると3~5日で発情は終了します。

子猫を産んで、子猫が離乳すると約1週間で発情が見られるようになります。

ちなみに授乳しなかった場合は、分娩後早くて1週間で発情が見られます。

年を取るにつれて発情徴候は弱くなり、回数も減っていきます。

もし妊娠したら、妊娠期間は62~66日で、平均63日です。

約2か月で子猫が生まれてくるということですね。

一方、オス猫は1年中繁殖可能です。

オス猫が性成熟を迎えるのは生後8か月で、早ければ生後5か月くらいで精巣内に精子が見られるようになります。

精巣は生まれた直後はお腹の中にありますが、生後20日で陰嚢に下降します。

時々正常に下降せず、精巣が1つしか確認できないこともあります。

正常に降りてこない精巣を潜在精巣や陰睾と言ったりします。

猫は犬よりも潜在精巣は少ない印象ですが、稀に遭遇します。

発情徴候を抑える方法

飼い猫の発情徴候が強く、夜中も鳴き声がうるさくて近所迷惑になって困っているという相談を受けることがあります。

避妊手術をしてしまうのが一番の方法かと思います。

ですが、飼い主さんでも家ですぐにできる対処方法が一つあります。

上手くいくこともあれば、上手くいかないこともあると思いますが。

それは、偽妊娠を誘起する方法です。

先ほど、猫は交尾の刺激で排卵するというお話をしました。

排卵するとその後発情は終了します。

これを利用して、膣に強い刺激を加えると、猫が交尾したと勘違いして、排卵が起こり、

妊娠はしていませんが、発情が落ち着くことがあります。

偽妊娠と言っても、乳腺が発達したりはしませんし、犬の偽妊娠のような臨床徴候は示しません。

やり方はでこぴんが簡単です。

教科書にはガラス棒で膣を刺激すると記載されていたりするのですが、さすがに家で膣に物を突っ込むのは危険なのでおすすめしません。

濡らした綿棒で刺激するという方法も聞きますが、下手するとバイ菌が膣の中に入ってしまうかもしれないですし、膣を傷つける危険もあります。

でこぴんならそんなに危険ではないと思うので、電話で相談を受けたときに時々お話することがあります。

猫の膣めがけてでこぴんする(指ではじく)と、上手くいけば2ヵ月発情を抑制できるかも。

病院では発情を抑制する注射をうつこともあります。

避妊手術はしたくないけど、発情徴候に困っているという方はとりあえず動物病院で相談してみてください。

避妊去勢手術のメリット・デメリット

避妊・去勢手術は受けた方がいいか? という相談も多く受けます。

手術を希望するかしないかは人それぞれです。

簡単にメリットとデメリットを書いてみます。

メリット

メスの場合

・病気の予防になる

 乳腺腫瘍の発生率低下、子宮内膜炎、子宮蓄膿症、卵巣疾患などの予防ができる。

特に猫の乳腺腫瘍は9割が悪性ですので、予後が悪いことが多いです。
避妊手術で乳腺腫瘍の発生率が下がるというのはメリットが大きいかもしれません。

・望まない出産を避けられる

・発情期のストレスが軽減される

オスの場合

・行動の緩和

 攻撃性、スプレー行動(マーキング)、マウント行為が手術をすることで軽減する。

 ただし絶対に問題行動が減るわけではないです。

 家の中でスプレーするようになったから手術したいと猫を連れて来る方は結構多いのですが、私は「去勢手術でスプレー行動が消えるかもしれないけど、絶対に消えるとは約束できないですよ」と必ず伝えています。

スプレー行動を抑えたいということなら、スプレー行動が始まる前に手術をすることをおすすめします。

・望まない妊娠の予防

・病気の予防になる

 精巣腫瘍、前立腺肥大
 ただ、猫はそもそも精巣や前立腺のトラブルがそんなに多くないので、病気の予防という点ではメリットは少ないかもしれません。
放浪・ケンカが減るので、結果的にケンカでうつる猫エイズや猫白血病ウイルス感染症などは予防できるかもしれません。

デメリット

・子孫を残せなくなる

・太りやすくなる

生殖器関連に費やしていたエネルギーが必要なくなるので、手術前と同じ食事をしていると太ります。

・全身麻酔のリスク

去勢避妊手術を受ける子は健康な子がほとんどなので麻酔をかけて死亡することは滅多に無いと思いますが、麻酔に絶対安全は無いです。

同じ年齢、同じ体重の猫でも麻酔をかけてみると猫によって癖というのか、違いを感じます。

面白いことに、親と子供など血縁関係がある子の麻酔をかけたときの癖が似ていると感じることが多々あります。

麻酔が効きやすい子がいたとしたら、その子供も効きやすかったり。

・尿道閉塞のリスク

オスの場合、去勢手術により尿道が未発達のままになり、尿石ができた時に尿道に詰まりやすいことがあります。

日本では生後6か月くらいから去勢手術を実施することが多いです。

海外ではもっと早期に手術することが推奨されています。

これまでは手術時期が早すぎるとリスク尿石症になったときの尿道閉塞のリスクが高くなると信じられてきましたが、最近はその考えに根拠はないとされ、日本でも早期に手術を推奨する病院もあります。

尿石症で尿道閉塞を起こす猫は去勢済みのオスの方が多い印象があります。

早期に手術した子に多いという印象は無いです。でも去勢済みに多いです。

もちろん未去勢でも尿石症による尿道閉塞は起きます。

ちなみにメスは尿道が太いので、オスと比較して圧倒的に尿道閉塞になる子が少ないです。

尿道閉塞は緊急性が高い危険な状態なので、いずれにしろオス猫は注意してください。

猫が頻繁にトイレに入って排尿姿勢をとっていたら、すぐに病院へ連絡してください。

発情期あるある~咬傷の猫が病院に来る~

余談ではありますが、繁殖期は攻撃的な行動も増えるので、咬傷で病院に連れてこられる猫が増えます。

つい最近も1頭お尻を咬まれた子がいました。

皮膚に穴が開いて患部が腫れ、排膿している子はわかりやすくていい方です。

最初は元気と食欲がないという主訴で来て、すぐに咬傷だとわからないこともあります。

猫は全身が毛で覆われているので、咬まれた直後だと膿も無く傷が見えません。

外に出ることがある猫の場合は体をよく触っていくと咬まれた傷を見つけられることもあります。

数日後に皮膚が腫れてきて破裂することにより気づくこともあります。

咬まれている場所では頭や首、肩のあたりか、お尻付近が多いです。

想像ですが、相手の猫に向かっていく子は頭・首・肩のあたりを咬まれ、相手から逃げた子はお尻付近を咬まれているのかなと思います。

なので、上半身を咬まれて帰ってきている場合、ケンカ相手の猫も傷を負っているかもしれないなーと思うことがあります。

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