急に冬らしくなり体が寒さについていけてない感じがします。
こういう時は人も体調を崩しやすいですよね。
犬や猫も同じくです。
今月は痙攣発作や膀胱炎などの泌尿器系トラブルで動物病院に来る患者さんが多いと感じています。
今日はこの時期頻繁に見かける泌尿器系トラブルのお話をしたいと思います。
どういう症状で病院に来ることが多い?
「トイレに頻繁に出入りしているのにおしっこがあまり出ていない」
「少量頻回の排尿で尿の色が赤っぽい(オレンジ、ピンクなども)」
「少量のおしっこをそこらじゅうでしている」
「頻繁に排尿姿勢をとっている」
「おしっこがポタポタとしか出ない」
「トイレで大きな声で鳴いていてあまり尿が出ていない」
「頻尿で陰部を頻繁に舐めている」
などを主訴に動物病院へ来る方が多いです。
この時期は本当に多いです。毎日数件来るような気がします。
原因として最も多いのは膀胱炎です。
尿道閉塞に要注意!
ですが、ここで注意しなければいけない点があります!
それは、おしっこが出せていて膀胱は空の状態なのか、それとも出せなくなっていておしっこが膀胱に溜まっている状態なのか。
これを見極める必要があります。
前者は膀胱は空っぽでも残尿感から排尿姿勢を何度も取ります。しかし膀胱は空なのでおしっこが出ていないように見えます。
後者は膀胱に溜まっているおしっこを出したいのに出せなくて排尿姿勢をとっており、緊急性が高いです。
これを尿道閉塞、略して尿閉と言ったりします。
特にオスはメスに比べて尿道が細いので尿道閉塞を起こしやすいです。
なので診察に出る時に性別は必ずチェックします。
メスも尿道閉塞を起こすことはあるのですが、比較的稀です。
なのでメスの場合は先ほどの主訴で来た場合は膀胱炎と診断される子が多いです。
犬よりも猫の方が尿道閉塞になりやすい印象です。
なので、特にオス猫の診察に出る時は尿道閉塞でないことを祈りながら診察を始めます。
尿道閉塞を起こしているか否かは膀胱を触診して見極めます。
肥満の子や体が大きい子では外から膀胱が触れないことがあるので、超音波やレントゲンで確認することもあります。
飼い主さんが家でどちらか見極めるのは難しいと思いますので、膀胱炎らしき症状が見られた場合はまずは動物病院へ連れて行くようにしてください。
尿道閉塞を起こしてパンパンに膨らんだ膀胱を下手に触ると破裂してしまうこともあるので注意です。
先ほど言ったように、尿道閉塞の場合は緊急性があります。
尿が全く出せない状態で放置してしまうと腎不全を起こし、亡くなってしまいます。
過去に尿道閉塞が原因で亡くなった子や重度の腎不全に陥ってしまっている症例は何件も見たことがあります。
症状が見られたのが夜中であっても、おしっこが出せていない可能性があれば夜間の動物病院を受診してほしいと思います。
尿道閉塞を起こしている場合は次第に元気が無くなってきます。
嘔吐が見られることもあります。
ペニスの色はピンク色から赤黒く変色します。
ぐったりしている場合は危険かもしれませんので急いで病院へ行くようにしてください。
腎不全を起こしてしまっても早く閉塞を解除して治療すれば助かる可能性は十分あります。
時間が経ってしまうと腎臓へのダメージが深刻になり、亡くなってしまいます。
膀胱炎であれば緊急性はあまりありませんが、家で「膀胱炎かな?様子みててもいいかな?」などと安易に判断しないようにしてくださいね。
膀胱炎・尿道閉塞の原因は?
尿を調べてみるとストルバイトやシュウ酸カルシウムなどの結晶が見つかることもよくありますし、細菌感染を起こしていることも多いです。
寒くなると飲水量が減るなどで、尿が濃くなることが引き金になることも多いように感じます。
また、ストレスが引き金になることも多いように思います。
例えば飼い主さんが外出して留守番が長かった、来客があった、犬猫を連れて遠出したなどのイベントの後に膀胱炎症状が出る子は結構多いです。
気候の変化も要注意です。
急に寒くなったりすると膀胱炎を起こす子が多いですが、逆に急に暑くなった時も泌尿器系トラブルで病院にくる子が増えるような気がします。
膀胱炎症状を繰り返す子を検査してみると膀胱に腫瘍が見つかることもあります。
逆に検査しても何も異常が見つからない原因不明の場合もあります(特発性)。こういう子はストレスが関係しているのかもしれませんが。
尿道閉塞の原因で最も多いのは尿石です。
肉眼で見えるほど大きな石でなくても、結晶が多量にあると尿道を詰まらせます。
結晶がある子の尿を観察してみるとすごく細かい砂みたいなものが見えることがあります。
砂状には見えずモヤモヤしたものが見える場合もあります。
このモヤモヤを顕微鏡で見てみるとストルバイトが見えたりします。
光学顕微鏡で100倍で見てこんな感じで見えます↓
宝石のようにとてもキレイに見えます。
大学の授業でも習うので知ってはいるものの、獣医師になって初めて現場で実物を見た時は「おぉ!」と思いました。
大学の授業ではストルバイトは棺桶のような形をしていると習うのですが、確かに犬のストルバイトは長方形で棺桶の様な形です。
ちなみに犬と猫ではやや形が違います。
猫は犬に比べて立体感が減る感じがします。ちなみに上の写真は猫のストルバイトです。
尿石症についてはまた改めてお話できたらいいなと考えています。
その時に犬と猫の比較写真もお見せできれば・・・。
今回は取り急ぎ、この時期に多い膀胱炎・尿道閉塞についてのお話でした。
緊急性があるかもしれないので症状が見られたら様子を見ずに早めに動物病院で診察を受けるようにしてくださいね! それが一番伝えたかったことです。
膀胱炎や尿石症の既往がある子は飲水量をしっかり確保することが大切です。
飲水量を増やす方法についてまとめた記事を先日アップしたので、もし良ければ参考にしてみてください↓
「水を飲んでほしいのに飲んでくれない!ワンちゃん・ネコちゃんの飲水量を増やす8つの方法」
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