こんにちは。
今日は犬のシャンプーに関するお話です。
動物病院にやってくるわんちゃんの中には皮膚トラブルを抱えている子が結構多くいます。
ペットの保険会社が発表している保険請求が多い疾患ランキングを見ていても、皮膚疾患は上位に位置しています。
皮膚は外から見える部分なのでトラブルが起きたときには飼い主さんも気づきやすい部位でもあり、ふだんから愛犬をよく見ている方はすごく小さな病変でも発見して動物病院へいらっしゃったりします。
よく見つけたなと感心することも多々あるものです。
皮膚の診察はほぼ毎日のようにあり、
「体を痒がっている」
「毛が剥げてきた」
「皮膚にブツブツができている」
「所々にかさぶたがある」
「毛が束でごそっと抜けた」
などなど、様々な皮膚症状で動物病院へ来られます。
そんな皮膚の診察をしている中で、よく思うことがあります。
それは、お家でのわんちゃんのシャンプーのやり方を聞いていて「そのシャンプーのやり方は見直した方がいい!」ということ。
皮膚トラブルのために家で定期的にシャンプーをしているという方は多いのですが、お話を聞いていると、シャンプーのせいでむしろ皮膚トラブルを悪化させているかも…?と思うことがあります。
ですので、本日は最低限ここは押さえてほしいというポイントをお話したいと思います。
お家で皮膚トラブルのある子をシャンプーしているという方、皮膚トラブルは無いけどふだんから家で犬のシャンプーをしている方も、今後少しでも皮膚のトラブルを招かないように参考にしていただければ幸いです。
そんなに細かいことは言いません。とりあえず最低限押さえてほしいなという話です。

シャンプー後に濡れたままにしている
まずダントツでやっている方が多いのは、シャンプー後に生乾きのまま放置しているパターン。
おすすめできません!
その後に皮膚の感染症になっている、もしくは元々あった感染症が悪化してしまっている子をよく見かけます!
膿皮症(皮膚の細菌感染)がなかなか治らないという子の話を聞いていると、頻繁に薬用シャンプーで洗っているものの、シャンプー後に乾かしてないという話が出てきたりします。
皮膚トラブルを抱えている子が診察に来た時に、「シャンプーの後はしっかり乾かしていますか?」と飼い主さんに聞いてみると、タオルで拭いて終わり、ドライヤーが嫌いだからそのまま自然乾燥など、しっかり乾かしていない子が割といます。
細菌やカビは湿気が好きです。
被毛の生乾きは皮膚病を悪化させているかもしれません。
シャンプー後はしっかりと乾かすことをおすすめします。
タオルである程度水気を取った後にドライヤーで乾かしてあげられるとベストだと思います。
ただし、タオルで強く擦り過ぎたり、高温のドライヤーを当てたり、乾かす際にブラシをかけすぎたりすると皮膚を痛める可能性があるので注意が必要です。

薬用シャンプーをすぐに洗い流している
皮膚病があったり、皮膚が弱いために薬用シャンプーを使用している方は多いです。
ですが話を聞いていると、シャンプーを体につけて全体を洗い終わったらそのまますぐに洗い流しているという方が結構多いです。
シャンプーの種類にもよるのですが、製品によっては5~10分ほどシャンプーを付けた状態で静置することが推奨されているものがあります。
ただ、犬の性格的にそんなに待てない!とおっしゃる方も多いです(^^;)
洗う時はせめて病変がある部分からシャンプーを付けていくと洗っている間にある程度時間が経つと思うのでおすすめです。

皮膚の上でシャンプー剤を泡立てている
シャンプー剤を直に被毛の上に垂らして皮膚の上で泡立てながら洗う、もしくは一度手に取ってからそのまま皮膚を擦りながら泡立てているという方もいるのではないでしょうか?
それで問題ない子もいるとは思いますが、皮膚が弱い子には刺激になってしまいます。
ゴシゴシと強く皮膚を擦ってしまうとシャンプー後に痒みが悪化してしまうことがあります。
皮膚が弱い子には先に別の容器でシャンプー剤を泡立ててから泡を体に付けて優しく洗うことをおすすめします。
シャンプー後のすすぎ時間が短い
シャンプーのすすぎが甘く、シャンプー剤が皮膚に残ってしまっていると、返って皮膚病が悪化する可能性があります。
背中に膿皮症がある子が病変部分を薬用シャンプーで洗い、その後元々の病変はきれいに消えたものの、直後に尾側の方に新たな病変が出現したということがありました。
ちなみに新たにできた病変もその後きれいに治ったのですが、今度はさらにその尾側にまた新たな病変ができてしまいました。
病変がどんどん広がっているというか移動しているというか…。
「ここは治ったけど、今度はこっちにできました」と飼い主さん。
どうもシャンプーをすることで病変が広がっているような印象を受けました。
要因は一つではないかもしれませんが、シャンプー剤のすすぎが甘い可能性があるような気がしました。
十分すすげたかなと思ってもシャンプー剤が残っていることがあります。
薬用シャンプーだと多少皮膚に残しておいた方が効果があるのでは?と考える方もいるかもしれませんが、そうでもないです。
しっかりすすぎましょう。
もういいかなと思っても、さらにその倍くらいの時間をかけてすすいでください。
シャンプーをつけて体を洗う時間と同じくらいの時間をかけて、これでもか!というくらいしっかりすすぎ作業を行うことをおすすめします。

温度が不適切
シャワーの温度が熱すぎると皮膚を痛めてしまうことがあります。
また、皮膚に痒みがある子では体を温めると痒みが悪化してしまうことがあります。
ちなみに犬の体温はだいたい38℃台です。
シャワーの温度は35~38℃くらいがおすすめです。
先ほど少し出てきましたが、ドライヤーの温度も注意です。
高温で乾かしてしまうと皮膚のダメージ、痒みに繋がります。
冷風で乾かせとまでは言いませんが、熱すぎないようにドライヤーの距離と風量に注意しましょう。
シャンプーの頻度が多すぎる
皮膚病の子ではシャンプーをして皮膚を清潔にしてあげたい、薬用シャンプーで皮膚病を治してあげたいなどと考える飼い主さんは少なくないと思います。
しかし、お風呂の入り方やどんなシャンプー剤を使うかにもよりますが、中には皮膚の脂分を落とす力が強いシャンプーもあり、あまり頻度が高いと逆に皮膚のバリア機能を損なって皮膚病が悪化してしまう可能性があります。
中には毎日飼い主と一緒にお風呂に入るのが日課で特に皮膚にトラブルが無いという犬もいたりはしますが、シャンプーの頻度にも注意が必要です。
薬用シャンプーの頻度が高いほど皮膚病には良いという訳ではありません。
皮膚疾患で動物病院に通院しているのであれば獣医師にシャンプーの頻度の相談をしてみるといいでしょう。
シャンプー後は耳のケアも忘れずに
シャンプーをすると耳に水が入ってしまったり、直接耳に水を入れているつもりがなくても湿気が入ってしまいます。
耳の中を水で湿気た状態にしていると外耳炎を発症してしまうことがあります。
とは言え、家で耳の中まで掃除するのは少々難易度が高いかもしれません。
下手に綿棒などで耳掃除をすると返って傷を付けて外耳炎になることもあります。
可能ならシャンプー後に動物病院へ行って耳掃除をしてもらうと良いと思います。
イヤークリーナーをお持ちであれば家で掃除してみるのもいいでしょう。
耳の中を拭くとしたらコットンなどを使って指が届く範囲にしておきましょう。
犬の耳の構造上、そう簡単には鼓膜に当たらないようになっていますが、お家で頑張って耳道の奥の方を拭こうとするのは危険なのでやめておきましょう。
最後に
皮膚疾患は種類にもよりますが、その子の体質が関係していることも多く、一時的には良化してもすぐに再発を繰り返してしまうことが多いです。
例えば膿皮症を繰り返し発症してしまう子では、皮膚のバリア機能が弱いことが関係していることが多く、それにはアトピーやアレルギーが関係していたりします。
アトピーやアレルギーは根本的な解決が難しく、一生付き合っていかなければならないことがほとんどです。
つまりは日常のケアが大事になってきます。
シャンプーもその日常ケアの一つです。
私もアトピー持ちで皮膚の痒みを小さい頃から抱えていますが、やはり痒みはストレスになります。
わんちゃんもおそらくストレスになっているだろうと思います。
痒みで夜寝られないという子も珍しくないです。
人間の大人と違う点は犬の場合は痒みがあっても我慢したりせず、徹底的に掻きむしります。
出血したり、強い炎症を起こしていてもさらに掻こうとします。
人の場合は掻くと余計に悪化するということが頭でわかっているので掻かないようにしたり、冷やしたりして自分で多少ケアもできますよね。
犬は自分でできない分、飼い主さんが頼りです。
正しくシャンプーをすることで皮膚のコンディションを整え、皮膚病のコントロールが少しでも上手くいくことを願っています。
薬用シャンプー、コンディショナーの紹介
いくつか有名なシャンプーを紹介しておきます。
シャンプーはかなり種類が豊富ですので、その子の皮膚に合ったシャンプーが見つかると良いのですが…。
動物病院によっては1、2回分を小分けにして売ってくれるところもあるかもしれないので聞いてみるといいかも。
マラセブ
皮膚の細菌感染やマラセチア皮膚炎がある子によく使用されるシャンプーです。
クロルヘキシジンという殺菌成分とミコナゾールという抗真菌成分が配合されています。
やや皮膚の脂分を落とす力が強めな印象があります。
脂っぽい皮膚の子には良いです◎
逆に皮膚が乾燥気味だったり弱い子にはちょっと注意かもしれません。
ノルバサン
こちらもクロルヘキシジンという殺菌成分を含んだシャンプーです。
細菌感染の子によく使います。
マラセブシャンプーよりも脂を落とす力は弱めです。
皮膚の感染症や臭いが気になるけれど皮膚が敏感な子にはマラセブよりこちらがおすすめ。
ヒノケア for プロフェッショナルズ
皮膚が弱い子におすすめなシャンプー。
保湿成分が高濃度に含まれているので、皮膚のバリア機能を維持するのに◎
泡で出てくるので飼い主さんがわざわざ泡立てる必要がありません。
オーツホイップシャンプー
こちらも皮膚が弱い子におすすめ。
天然のオーツ成分が含まれ、被毛に光沢をもたらし、うるおいを保つシャンプーです。
トリマーの方に使用感を聞いてみたのですが、「良い感じ」と好評でした。
エピスース
以前は単純にエピスースという名前のシャンプーでしたが、近年名前が変わり「アラダーム センシティブスキン エピスース」とちょっと長くなりましたね…。エピスースと呼んでいます。
青リンゴの香りがして私は結構このシャンプーの香りが好きです。
良い点はもちろん香りだけではありません。
保湿成分を含み、乾燥による痒みがある子におすすめのシャンプーです。
敏感肌のわんちゃんに使えます。
アデルミル
アトピー、アレルギー体質の子におすすめなシャンプーです。
こちらも保湿成分が含まれ、健康な皮膚のバリア機能を保ちます。
皮膚の痒みのある子に使用してみたところ、飼い主さんから「このシャンプーにしてから痒みが良化した」という声を頂いたことがあります。
ヒュミラック
こちらはシャンプーではなく、コンディショナーです。
保湿成分の尿素を含んでおり、シャンプー後の乾燥が気になる、フケが気になるという方におすすめ。
シャンプー+ヒュミラックで皮膚病が良好にコントロールできている子を見たことがあります。
こちらは洗い流す必要はありません。

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