こんにちは。
本日はジアルジアという寄生虫のお話です。
先日、犬の糞便検査をしていたら発見したので動画を撮りました。
見た目が特徴的で面白いので紹介したいと思います。
ジアルジアとは
ジアルジアとは、大きく分けると原虫の仲間で、原虫の中でも鞭毛虫に分類されます。
形態は栄養型と嚢子型(シストともいいます)の2種類があり、下痢便の中に出てくるのは栄養型、普通便に出てくるのは嚢子型です。
普通に糞便検査をしていて発見できるのは栄養型という方で、4対8本の鞭毛を使って下痢便の中を動き回っているため顕微鏡で観察すると発見することがあります。
こちら、栄養型のイラストです↓
動き方がヒラヒラしているため、“落ち葉が風に舞うような動き”と表現されたりします。一方嚢子型は動かないので、普通に顕微鏡を見ていても発見することは難しいです。特殊な染色を施さないと見つけることができません。
光学顕微鏡400倍の倍率で無染色の状態では以下のように見えます↓(右上あたり)
ふだん犬の糞便検査で発見するジアルジアはGiardia intestinalisという種類です。
猫にも感染しますし、人にも感染します。他にも羊や牛、ネズミなど多くの哺乳類に感染しますが、遺伝子型があり、遺伝子型によって宿主特異性があるようです。
ここでは犬猫人を中心に話したいだけなので単にジアルジアと一括りで表現させてもらいます。
ジアルジアの感染経路
ジアルジアは経口感染します。
感染した動物の糞便中に出てきたジアルジアを別の個体が何らかで口にしてしまうと感染します。
感染した個体の糞便はもちろん、その糞便に汚染された食器やケージ、飲水料などを介しても感染します。
特に集団飼育している所では感染が広がりやすいので注意が必要です。
ジアルジアを見かけるタイミングとしては、家にやってきて間もない時期が多いです。
ジアルジアに感染したときに見られる症状
代表的な症状は下痢で、水様下痢になることがあります。
その他、食欲不振、体重減少など。
特に免疫力の弱い子犬などで症状が見られやすいです。
成犬では感染していても症状を出さないこともあります。
ジアルジアの診断方法
糞便を顕微鏡で観察することでジアルジアを発見できることがあります。
しかし顕微鏡で糞便検査をしても発見できないことも珍しくなく、糞便を使って抗原検査や遺伝子検査をすることで検出されることもあります。
ジアルジアの治療法
抗原虫薬(メトロニダゾールが一般的かと思います)を投与することで駆虫できます。
メトロニダゾールはジアルジア以外にも処方することが時々あるのですが、あまり美味しくはないようで、時々飼い主さんから「飲ませられません」と言われてしまうことがあります…。
今のところ私は幸運にもジアルジアの患者さんに飲めなかったと言われた経験は無いのですが、ジアルジアの患者さんに処方する場合は他の用途で使用するよりもやや高用量で処方することが多いので、より飲ませるのが大変かもしれませんね…。
1回薬を投与すれば駆虫が完了するという訳でもなく、獣医師によってもやり方は多少異なると思いますが、私は1日2回、1週間~10日分の薬を処方して、飲み終わったら再度糞便検査をしてみてジアルジアを確認するという風にしています。
1クール目でジアルジアの姿は消えることが多いように思いますが、2クールくらいは念のため投与してもらうことが多いイメージです。
ジアルジアの予防法
飼育環境を清潔に保つ、他の犬の糞便には接触させない、感染した動物は隔離するなどでしょうか。
ジアルジアのシストはとても抵抗性が強く、アルコール消毒では効果がありません。
可能なら熱湯消毒をして、しっかり乾燥させるといいでしょう。
人にも感染するため、糞便が付いたものを処理した後はしっかりと手を洗いましょう。
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