柴犬は人気犬種ランキングがあるとたいてい上位に君臨している人気犬種です。
日本原産の犬の中では最も多く飼育されています。
ちなみにアニコム損害保険株式会社が発表している人気犬種ランキング2024年度版では4位にランクインしています。
動物病院で柴犬を見ない日は無いです。
私の身の回りで犬を飼っている親戚などを思い浮かべても柴犬を飼っている人がとても多いです。
柴犬はどんな性格をしている?
どんな病気が多いのでしょう?
ふだん柴犬と接していて感じることなど、獣医師の視点で見る柴犬についてお話します。
これから柴犬を飼いたいと考えている方、犬を飼いたいけどどんな犬を飼うか迷っている方など、ぜひ参考にしていただければと思います。
柴犬の体の特徴
見た目はご存知のとおりだと思います。
がっしりした体つき、立ち耳、密な体毛、くるんと巻いた尻尾。
体高は35〜41cm。オスの方がメスより少し大きめです。
ちなみに「柴」というのは古語で「小さいもの」の意味です。
体重は7〜14kgくらいですが、太らせると20kgを超える子もいます(太らせないで下さいね)。
色は茶色い柴犬(赤)が多いですが、他に黒褐色、胡麻が認められています。
胡麻というのは赤、白、黒が混じった色です。
中でも黒が強めの胡麻を黒胡麻、赤が強めの胡麻を赤胡麻といいます。
胡麻は比較的珍しい毛色であまり見かけないです。
白色もいますが、公認はされていません。
ふだん最も見ることが多いのは赤。次に黒と白は同じくらい見かける印象です。
体毛はまっすぐて硬い上毛と柔らかい下毛のダブルコートで、換毛期はめちゃくちゃ毛が抜けます!
エンドレスで面白いくらいズボズボ毛が抜けます。
柴犬の歴史
縄文時代に南方から来た犬と、弥生時代に大陸から入って来た犬が混ざり、現在の日本犬の基礎になったと言われています。
柴犬はその中でも日本海に面した山岳地方の犬で、かつては小動物や鳥の狩猟犬として活躍していたようです。
しかし、海外からイングリッシュセターやイングリッシュポインターなどの猟犬が輸入されると交雑が進み、柴犬は減少しました。
一時絶滅の危機に瀕しましたが、愛好家の尽力により1934年に犬種として公認されたことで守られ、さらに1936年には国の天然記念物に指定されました。
柴犬の性格
性格は個体差がありますが、比較的他人に対する警戒心が強い犬種だと感じます。
好奇心はわりと旺盛でにおいを嗅ぎに近づくものの、家族以外の人が体を触ろうとすると避けたりします。
動物病院に来ると何か嫌なことをされると勘付いて特段警戒モードになることが多いです。
良く言えば賢いです。
何度か動物病院に来ている子はまず怖がって動物病院の中に入るのを嫌がる子が多いです。
動物病院の入り口で中に入るのを抵抗して首輪が抜けて走って逃げてしまうなんてことも時々あります。
動物病院となるとパニックになるので頭をタオルで隠されて見えないようにして来院する柴犬も見たことがあります。
注射をうったり、爪を切ったりなど、何かされると感じると大騒ぎする子も珍しくないです。
他の犬種でも動物病院は嫌がりますが、柴犬は特に大袈裟に嫌がって騒ぐ子がいます。
初めから大袈裟に騒ぐ子もいれば、初めは様子をじっとうかがって大人しく座っていて、いざ注射をうつとなると途端に大鳴きする子もいます。
注射くらいなら許容範囲なのか無反応でじっと耐えてくれる子もいますが、何かよくわからないことをされると感じた瞬間にものすごい拒否行動をとる子もいます。
パニックに陥って攻撃性が出ることも珍しくないです。
飼い主さんが傍についていれば大人しくなる子も多いですが、それなりに体も大きいので本気で怒ってしまうと飼い主さんでも抑えきれないこともあります。
体調が悪くて検査をしたくても、暴れて採血やレントゲン撮影などができないことも時々あります。
柴犬に噛まれるとかなり痛いです…。
警戒して歯をむき出しにして唸ってこられると結構迫力があって怖いです。
子犬の頃からしつけをしっかりしておかないと攻撃性のある子に育ってしまったり、嫌なことは許さないわがままな性格になることもあるので要注意です。
とあるペットイベントを訪れたとき、しつけ教室が開催されていました。
黒柴が1頭参加していたのですが、訓練士の方が「黒柴は言うこと聞かないから頑張ってね!」みたいなことを飼い主さんに言っていました。黒柴にも個体差はあると思いますが。
小さい頃に噛み癖がつくことがありますが、それも早めに対処しておかないと大きくなってから噛み癖があるままだと他人を噛んだりしてトラブルに発展することもあります。
獣医師を噛んでもあまりトラブルに発展することはないですが、街中で普通の人や犬を噛むと大事になったりするので気をつけてください。そこでさらに狂犬病ワクチンをうっていないなんてことになるとさらに事が大きくなりますので、必ず狂犬病ワクチンは接種するようにしてくださいね。
基本的には最初から攻撃性を表してくる子は少ないですが、危機に陥ると果敢に立ち向かいます。
初心者にはちょっと難しい犬種かなとも思いますが、個体差もあるので絶対おすすめしないという程ではないです。
とても大人しく穏やかな性格の柴犬もいます。
初めて犬を飼う方でも柴犬を飼っている方はいっぱいいるので、そこまで心配しなくても良いと思いますが、しつけには気を遣ってほしいと思います。
それに家族にはわりと従順な性格をしていると思います。
ちゃんと吠えると声量はそれなりにあってうるさいです。
ですが、家に知らない人が来ると吠えたりすることはありますが、常に無駄に吠えまくるようなことは少ないように思います。
柴犬に多い病気
柴犬はわりと長く生きる子が多い印象です。
平均寿命は12~15歳くらいですが、認知症になり、寝たきりになり、よぼよぼでガリガリに痩せ細っても食欲だけは最後まで旺盛で、19歳、20歳まで生きたなんてことも結構あります。
柴犬を飼う場合は20年近く生きる可能性を考えて飼ってください。
以下、柴犬でみることが多い病気を紹介していきます。
認知症
高齢になると認知症になる子が多いです。
夜中に寝ないでワンワン鳴いたり、ウロウロ歩き回って角に頭を突っ込んで動けなくなったりします。
高齢の柴犬を飼っている方から「夜中に鳴くので近所迷惑になっていないか心配。家族も眠れなくて参っている。どうにかならないか?」こんな相談を受けることもよくあります。
皮膚病
皮膚病も多いです。体の痒みを主訴によく来院します。
特にアトピーなどアレルギー性皮膚炎を持っている子がよくいます。
膿皮症という皮膚病になることもあります。
外耳炎
耳も皮膚病の一部と言えばそうなのですが、外耳炎を発症することもよくあります。
警戒心が強いので耳の洗浄をやろうとすると大騒ぎして抵抗したり、抵抗まで行かなくても嫌がって大きい声で鳴いたりします。
特に外耳炎がひどいと痛みを伴うので、耳を触るだけでギャン鳴きされて処置が大変なことがあります。
緑内障
高齢になってくると緑内障を発症する子がよくいます。
眼圧が上昇し、片方もしくは両方の眼球が大きくなり、痛みが出て視力が失われます。
甲状腺機能低下症
年を取ってくると甲状腺の機能が低下し、代謝が悪くなります。
なんとなく元気が無く寝ている時間が多い、ごはんを食べてない割には痩せない・太りやすい、足先が冷たい、特に体の先端(尻尾の先や耳の先)の毛が抜ける、刈った毛が生えてこないなどの症状がみられます。皮膚が黒ずんだり、皮膚炎を起こしやすくもなります。
また血液検査で中性脂肪やコレステロールが上昇します。
柴犬を飼ったらやってほしいこと
・ブラッシング
換毛期は抜け毛が多く、放置することで皮膚病に繋がることもあるのでブラッシングは毎日行うことをおすすめします。特に換毛期は念入りに。
・しつけ
特に噛み癖や攻撃性に注意が必要です。
子犬のうちから様々な環境や他人に慣れさせるなどトレーニングを。
ちなみに学習能力は高いと思います。基本的な訓練はすぐに身に付けてくれます。
しつけは家族みんなの協力が必要で大変なこともあるかもしれませんが、根気よく色々教えてみてください。
叱りながらしつけをすると犬からの信頼を失って余計に言うことを聞かなくなるかもしれないので、楽しい気持ちでトレーニングしてみてください。
・運動
運動量はそれなりに必要な犬種です。天気が悪くても毎日散歩に行く心構えを。
ただし、真夏は熱中症に注意です。
早朝や夜間に散歩に行くいようにしてくださいね。
日が落ちてからもしばらくは地面は熱を持っていて熱いです。
散歩に行く際は地面の温度にも注意です。
・名札、マイクロチップなど個体識別できる物の装着
時々何かに驚いたり、怖くてパニックを起こして走って逃げてしまうことがあります。
動物病院が怖くて走って逃げる、花火大会の音に驚いて逃げる、地震に驚いて逃げる、雷の音に驚いて逃げるなどなど。
過去に「柴犬を保護したんですけど、こちらの患者さんだったりしませんか?」と、動物病院に連れて来る方がいたこともありました。
家の敷地から出ないように柵があったとしても、パニックになると想像以上の身体能力を発揮することがあります。
ですので、逃げて迷子になった時のために対策しておくことをおすすめします。
簡単にできるのは首輪に名前と電話番号を縫い付けておくなどです。
最近は家に迎え入れた時点でマイクロチップが入っていたりするので、ちゃんとマイクロチップの登録を済ませておきましょう。
脱走癖がある子に関してはGPSを付けておくという手もあります。
以下、柴犬関連グッズです。柴犬は唐草模様がホントに似合うなぁと感じます。
雨の日に散歩に行くときにはレインコートを着せている方も多いですね。
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