暑くなってきましたね。
体が暑さに慣れていないのもあってか、すでに夏バテ気味です(笑)
最近は犬の体にノミがついているかもしれないから確認してほしいという方やノミの駆除薬を買いに来る方が少し増えてきています。
ということで、今日はノミについてまとめてみました。
ノミの生活環
ノミは気温13℃以上で活動すると言われています。
メスは吸血後1~2日で産卵します。24時間以内に産卵する能力があるという話も。
宿主の体表で卵が産出され、一旦体表から落下します。
その後適切な温度・湿度条件下で早ければ1日で孵化し、幼虫は有機物または成虫の糞を餌として発育します。
10日ほどで繭を形成し、中で蛹となります。
蛹は早くて1週間で成虫となり、宿主となる動物が近づいてくると、跳躍して体表にとりついてまた吸血します。
メスしか吸血しない蚊とは異なり、ノミはオスもメスも吸血します。
イヌノミ、ネコノミという名前のノミがいますが、ネコノミが一般的です。
犬に寄生しているノミもほとんどがネコノミです。
と言ってもぱっと見で区別をつけるのは難しいかな。
顕微鏡で観察してみて頭の形が丸いのがイヌノミ、頭がほんの少し尖っているのがネコノミです。
どうやったらノミが寄生しているかわかる?
大量寄生している場合は体表をチョロチョロ走り回っているノミの成虫が簡単に見つけられます。
特に毛の薄い腹部のあたりがわかり易いかもしれません。
「ノミって目で見えるの?」と質問されることが時々あります。
ゴマ粒より少し小さいくらいのサイズですので目で見えます。
少数の寄生の場合は、ノミの成虫を見つけるのは困難かもしれないので、その場合はノミ糞を探すことをおすすめします。
ノミ取りブラシでブラッシングしてみたり、毛をかきわけてみて黒い粒々が見られたらノミ糞かもしれません。
毛をかき分ける時に、特にノミ糞が多い部位としては背中の尻尾の付け根です。
黒い粒々を見つけたら濡らしたティッシュにこすりつけてみて下さい。
ノミ糞には血液成分が含まれているので、赤っぽい色が染み出てきたらノミ糞の可能性大です。
ノミ糞が見つかったら、ノミが寄生していると考えて早めに対策を取りましょう。
ノミが引き起こす病気
・ノミアレルギー性皮膚炎
ノミが体に寄生することで、激しい痒みや脱毛が起きることがあります。
・瓜実条虫
犬や猫が体に付いたノミを食べてしまうことで、ノミを中間宿主としている瓜実条虫が体内に侵入します。
体内に侵入した瓜実条虫は小腸に定着します。
条虫の体は片節と言われるものが連なった構造をしており、瓜実条虫の全長は15~80cm、片節数は100個を超える場合もあると言います。
ただし、多数寄生している場合は小型の虫体が多いです。
感染後21~28日で受胎片節といって、簡単に言うと中に虫卵が入っている体の端っこが千切れて糞便中に出てきます。
この受胎片節が瓜の実に似ていることから瓜実条虫という名前が付けられています。
便の表面に白いゴマ粒のような物が付着していたり、寝床にパラパラと落ちていることで飼い主さんが気づくことが多いです。
寄生された動物は無症状なこともあれば、下痢や嘔吐などがみられることもあります。
ちなみに滅多に無いと思いますが、人間もノミを食べてしまった場合は瓜実条虫に感染しますのでご注意を。
・貧血
ノミは吸血する生き物です。
信じられないかもしれませんが、ノミが体にたくさん寄生すると吸血されすぎて貧血になることがあります。
それも軽度ではなく、重度の貧血に陥る子がいます。
過去に重度の貧血でぐったりしてしまい、輸血が必要だった子を見たことがあります。
以下は人で問題になる病気です。
・猫ひっかき病
猫ひっかき病の病原体であるBartonella henselaeという菌はノミが媒介します。
感染した猫に人が引っ掻かれたり咬まれたりすることで、リンパ節が腫れて発熱や頭痛を引き起こします。
ちなみに猫は不顕性感染(無症状)です。
・ノミ刺咬症
ノミに咬まれて強い痒みに悩まされたり、発疹が出ます。
このイラストでは腕を刺されていますが、私の経験ではどちらかというと足を刺される方が多いです。
ノミがついてしまったら
まずは駆除薬の投与をしましょう。
動物病院で処方してもらうのがいいと思います。
地道に体に付いたノミを1匹ずつ見つけ出して潰すのが好きという飼い主さんに出会ったことがありますが、時間が経つとどんどん繁殖してしまって手に負えなくなります。
早めに薬で手っ取り早く駆除するのがおすすめです…。
それから家の中をしっかり掃除してください。
具体的には掃除機をかけたり、洗濯、駆除剤(バルサンなど)の使用など。
卵が落ちているとそこから再び動物に寄生してしまいます。
家の中に広がってしまうと厄介かもしれません。
動物への駆除薬の投与は1回ではなく、数回投与することをおすすめします。
ほとんどの製品が1か月間隔で投与するものです。
ノミがいなくなった後も予防的に駆除薬を使用するのがいいかもしれません。
冬の間はノミの活動が落ちますが、室内が暖房で温められているとノミも活動できます。
そのため、通年で予防されている方も多いです。
ノミ取りシャンプーという物もありますが、すごく効果が高いという印象は無いです。
先に駆除薬を投与してからノミの死体とノミ糞などをシャンプーで綺麗に洗い落とす方がおすすめです。
毎月投薬しているのにノミがついてしまったと言って病院へいらっしゃる方も時々います。
その場合は、以下の様な対処方法が挙げられます。
・薬の種類を変更する
・ノミが体に付着した直後だった可能性を考える
薬の効果が発揮するまでには大抵数時間かかります。
投与を行っていれば、そのノミは薬の影響を受けて数時間後にはいなくなるかもしれません。
立て続けにノミを見るような場合やノミ糞が多く見られる場合は薬が効いていないことを考えた方がいいでしょう。
・投与が正しくできていたか確認
経口投与の場合は、投与後こっそり吐き出していたということも。
滴下薬の場合は、直後にシャンプーで洗い流していないか、投与後頻繁にシャンプーしていないかなど。
投与後どれくらいでシャンプーしても良いかは製品によって異なります。
動物病院で薬を処方されている場合は動物病院で聞いてみるのが手っ取り早いかもしれません。
シャンプーは可能でも、頻繁に洗うと効果が減弱してしまう製品もあります。
ほとんどの薬は投与後1か月くらい効果が持続します。
最後に投与してから1か月経っていませんか?
また、逆にシャンプー直後の投与が向かない薬もあります。
一度シャンプーして体を綺麗にしてから投与したいと考える方もいるかもしれませんが、例えばフロントラインは体表の脂分を伝わって全身に広がり、皮脂腺に蓄えられて、皮脂と共に再び体表や被毛に放出されるお薬です。
そのため、シャンプーで体表の脂分を落としてしまうと薬の成分が全身に広がるのを妨げることになります。
シャンプーの前後2日間は投与を避けるようにと添付文書に記載されています。
レボリューションは経皮から成分が吸収されるので、投与後2時間はシャンプーNGとされていますが、その後はシャンプーの影響は受けないとされています。
ただし、猫のレボリューションプラスは投与後24時間はシャンプーを避けることが望ましいとされています。
滴下薬VS経口薬
ノミ駆除薬には主に皮膚に滴下するタイプと食べるタイプがあります。
それぞれメリットとデメリットを挙げてみます。
滴下薬のメリット
・自分で舐められない首の後ろに液体をたらすだけなので、投薬が簡単。
経口薬を食べてくれない子には圧倒的に楽。
・物によってはノミの成虫だけでなく、卵の孵化阻止や幼虫にも効果がある。
滴下薬のデメリット
・投与した直後はシャンプーができない。
・製品によっては頻繁にシャンプーすることにより効果が減弱する可能性がある。
・投与する際、皮膚に薬が付着した時に気分が悪くなる人がいる。
・投与直後は首の後ろに薬が付いているので、抱っこしにくい。
・多頭飼育の場合、他の子が舐めてしまうことがある。
経口薬のメリット
・シャンプーの影響を受けない。
・嗜好性が高く作られているものが多く、好きな子はおやつ感覚で喜んで食べてくれる。
毎月与えるのが楽しみという飼い主さんも。
・投与してからノミが駆除されるまでの時間が滴下薬よりも少し早い。
経口薬のデメリット
・投薬が難しい子がいる。
例えば頑なに食べようとせず、口に突っ込んでも飲み込まずに吐き出してしまう。
・飲み込んだけれど直後に薬を丸々吐いてしまった場合も再投与が必要。
経口でも滴下でも、とにかく家では投与できない!という方もいます。
毎月、投薬のためだけに動物病院へ連れて来るという方も。
それでもOKですよ。
ノミ駆除薬の製品例
※他の外部寄生虫にも効果がある薬が含まれていますが、ノミに関してのみ記載しています。
滴下薬
・フロントライン/フロントラインプラス(犬・猫)
フロントラインはノミの成虫駆除効果。
フロントラインプラスはノミの成虫駆除効果に加え、ノミの卵の孵化・発育を阻止。
ノミが体表・被毛の有効成分と接触することで効果を発揮。
投与後24時間でほとんどのノミの成虫を駆除する。
・レボリューション12%・6%(犬・猫)
ノミの成虫駆除、卵の孵化阻害、殺幼虫作用によるノミ寄生予防。
6週齢未満の犬猫には使えない。
投与後2時間はシャンプーしないようにする。
・レボリューションプラス(猫)
ノミの成虫駆除、卵の孵化阻害、殺幼虫作用によるノミ寄生予防。
投与後12時間以内に効果を発現し始め、24時間でノミを駆除する。
投与後24時間はシャンプーを控えることが望ましいとされている。
8週齢未満の猫、体重1.3kg未満の猫には投与しないこと。
・ネクスガードキャットコンボ(猫)
ノミの成虫駆除効果。
8週齢以上、体重800g以上の猫から使用可能。
・フィプロスポット/フィプロスポットプラス(犬・猫)
フィプロスポットはノミの成虫駆除効果。
フィプロスポットプラスはノミの成虫の駆除の他、卵の孵化阻害、幼虫の変態阻害によるノミ寄生予防効果。
フィプロスポットドッグは10週齢以上、体重2kg以上の犬から使用可能。
フィプロスポットプラスドッグは8週齢以上の犬で使用可能。
フィプロスポットキャットは12週齢以上、フィプロスポットプラスキャットは8週齢以上で使用可能。
・アドボケート(犬・猫)
猫は9週齢未満、犬は7週齢未満、両者体重1kg未満では投与しないこと。
寄生したノミが体表上に広がった有効成分と接触することで、吸血に依存せず駆除効果を発揮。
経口薬
・ネクスガード(犬)
ノミの成虫駆除効果。
投与後30分でノミを駆除し始め、8時間以内にノミを駆除する。
速やかな効果により、ノミが卵を産む前に駆除することができる。
新たに寄生したノミが8時間程度は犬の体表に認められることがある。
8週齢未満、体重1.8kg未満の犬には投与できない。
私もネクスガードは犬に投与したことがありますが、確かに効果が早いです。
投与した次の日にはノミの死骸がポロポロ落ちています。
ネクスガードをやってみてノミが落ちなかったことはないです。
・シンパリカ(犬)
ノミの成虫駆除効果。
投与後3時間で効果を発揮。
8週齢以上、体重1.3kg以上から使用可能。
・クレデリオ(犬)
ノミの成虫駆除効果。
投与後6時間以内に既に寄生しているノミを駆除。新たに寄生したノミに対しては4時間以内に駆除効果を発現。
生後8週齢、体重1.5kgから使用可能。
他にもノミの駆除薬はたくさん販売されています。
書ききれないのでこのへんにしておきます。
個人的には確実にノミがいなくなると感じるのは経口タイプです。
滴下タイプでも問題はないと思いますが、時々「ノミ駆除薬を投与しているのにノミが居なくならない」と相談にいらっしゃるのは滴下薬を使用している方が多いです。
付け方に問題があるか、付けた後に頻繁にシャンプーしてしまっているのか、はたまたノミに耐性があるのか、効かない理由はそれぞれかもしれませんし、詳細は不明です。
効果は出ているけれど、たまたま皮膚に付いた直後のノミを見つけてしまっただけという場合もあるでしょう。
どちらを選ぶかは人ぞれぞれだと思います。
飼い主さんからみた使いやすさ、薬の値段など、ノミ駆除以外の効果(例えばマダニにも有効かどうかとか)で比較してみるといいです。
動物に薬の成分が合わないということもあるので、そのへんは使ってみないとわからないです。
動物病院によって取り扱っている薬の種類は違うので、動物病院で相談してみてください。
2024年8月現在、猫の経口タイプのノミ駆除薬は国内では販売されていません。海外にはあります。
数年前までコンフォティスという経口薬があったのですが、販売が終了してしまいました。
投与後に吐いてしまうことも結構ありましたが、効果は高かったので助かっていたんですが…。
「猫の食べるタイプのノミ取り下さい」と来院される方は結構多いので、また発売されないかな~。
背中に滴下したのにノミが取れないという猫ちゃんに犬用の経口タイプの薬を応用することはありますが。
ややまとまりが悪い感じがしますが、今回はこのあたりで終わりにします。
また何かあったら付け加えていきます。
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